4月から、介護職の給料が2万円アップ?
民主党が「介護労働者の人材確保特別措置法案」を衆議院に提出。
http://www.asahi.com/politics/update/0109/TKY200801090306.html
(朝日新聞)
>民主党は9日、介護職員の賃金を引き上げるための「介護労働者の人材確保特別措置法案」を衆院に提出した。介護現場で人材不足が深刻化しており、介護の質を確保するため待遇改善が急務と判断した。08年度予算での対応を政府に求めていくという。
>法案では、地域別や介護サービス別に平均賃金を算出し、それを上回る介護事業所の介護報酬を3%引き上げる。必要な900億円は全額国庫で負担する。これにより、半数の事業所の職員40万人(常勤換算)の賃金が月2万円増える計算だ。
詳しくは、民主党のホームページ。法案全文もあり。
http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=12484
いや~、昨年9月来「
討ち入りの怪気炎が議員によっぽどこたえたのか? 樋口恵子氏の力技には正直おどろく。
取り組みが目に見えて政治につながっていることを実感できて、少し感動。
私も集会で貧乏自慢をしたかいがあるというもの。
この法案では明快に、「賃金の向上」によって、「優れた人材の確保と介護サービスの質の向上」を図るとうたっている。
とかく、福祉のココロや助け合いや奉仕が強調され、結果としては低賃金におとしめられていたことを考えると、民主党がきちんと、「優れた人材もカネ次第」としたのはエライ。
さらに全額、国費。事業所へ支払われる介護報酬はアップするが、10割が国の負担ゆえ利用者負担もなく、保険の収支とは別だから介護保険料の増にもつながらない。女性の会が望んだカタチそのまま。
そして単に介護報酬を上げるだけでなく、給料が平均より高い事業者(認定介護事業者)に限って上乗せする、という工夫で、報酬の増が経営者の利益ではなく、労働者の給料増とつながるようにされている。この辺がウリ。
反面、法案をよくよむと、ちょっと心もとないところもある。
まず、介護保険法の事業者に対象が限定されていること。自立支援法にもとづいて障害者の介護を担う人材や、法律の枠外で提供されているケアサービスの担い手には、効果がない。同じ介護労働者、まして障害者の方も人で不足は深刻。
(ちなみに介護保険の居宅介護支援事業者、つまりケアマネジャーは対象)
それから、加算介護報酬の額がいくらになるかは、地域ごと介護以外の労働者の賃金との比較によって、厚生労働大臣が決めるとのこと。
民主党の想定や記事では3%増、総額900億円で40万人の介護職、一人当たり平均2万円とされているが、そもそもの3万円よりはダウンしている。今後の国会内での妥協を考えると、はじめはもっと強気でいって欲しい。(全産業より平均賃金が10万円安いことを考えると、もちょっと色をつけて5万円とか…)。
さらに、給料がすでに平均より高い「認定介護事業者」に限ってさらに上乗せするわけなので、事業所間格差は拡大する。「認定」は公衆に表示することにしているから、いわば役所による「高給保証」のつくところ・つかないところが半々くらい、つかないところの介護職は、ますます逃げ出したくなるが、現場はまわらない。厳しい人員基準を満たさなくなる。
慌てて経営者が昇給を図っても、そもそも平均値をもとに認定をつけるので、給与のハードルは上がる、そして常に半分の介護職は取り残され、「高給保証」事業者への転職を図る…。
他業種との格差、介護業界内での格差。
かくさかくさでどうすんのさ! みんなで昇給錯覚さ?
考えようによっては、事業者間の淘汰がますます進む。
利益を上げる競争ではなく、労働条件を上げる競争による淘汰は、一般的には望ましいように思えるが、条件は現状の介護報酬のなかでやらないといけない。
結果的には、非課税で、まだ高給の古職員を残している社会福祉法人や、医療法人が、平均賃金では有利と思われ、株式会社やNPO、零細事業所などは、いっそう厳しい経営努力のなかに放り込まれる。従業員ともども消耗してつぶれていく。
そして利用者はなじみの事業所を失うという、それはそれは恐ろしいことにもなりかねない。
国会での議論に注目。
あわせて社長! 早く給料上げた方がいいですよ! 生き残りのために。
え? ない袖はふれない? いまの介護報酬で?
じゃぁ、やっぱり、やめますか…、介護のお仕事。
あれ?