とんち教室というラジオ番組が昔あって、青木一雄アナウンサーという方がずっと「先生」を勤めていた。
1949年から1969年。
私の生まれる前年に終わっているので、リアルタイムでは残念もちろん聴いていない。
青木せんせいのエッセイ集『長生きとんち教室』は、食べ物やお酒や健康・長寿について、いろいろなうんちくが語られていて楽しい。
徳川夢声さんとか、青木さんと交流深く、登場する人物たちがまた面白いのだけど、なかでも古垣鉄郎さんという方はすばらしい。
なにしろ戦前は国際連盟で活躍後、朝日新聞に入り要職を経て、NHKへ転じ会長まで務め、退任後はフランス大使という、まあ大変なエリートな訳ですが…
(以下引用)
(古垣さんは)「小」のほうが近いので評判でした。かつて徳川夢声さんとの対談「問答有用」で、
古垣「一時間おきぐらいにするんですよ。野球見物のときなんか非常に困る。しかたがないから、ズボンを汚すことにしています」
夢声「こりゃ驚いた。たれ流しですか」
古垣「いつだったか省線の中で非常にもよおしたことがあるんです。隣のやつがしきりにしゃべりかける。こっちは聞いていても、うわの空ですよ。とうとう、たれ流しました」
夢声「くつの中にたまるでしょう」
古垣「小便なんて、汗の一種だと思えば、汚くないんでね」
夢声「分析してみると、汗と小便はおんなじもんですからね。ただ汗をまとめて出すだけのことです」
古垣「占領当時、進駐軍のところへいって談判してるときに、もよおしてくる。話の途中で立つわけにもいかんし、そんなときは、やっぱりズボンをぬらしましたね」
と、陽気に語っておられました。
(引用終わり)
臭いとか冷たいとか気持ち悪いとか不潔とか情けないとかカッコ悪いとか、そんな通念をぜんぜん気にしない。
夢声さんも「ただ汗をまとめて出すだけのことです」って…。
やっぱり昔の人は、とんちも鷹揚。長生きしそうだ。