朝、自転車で仕事場へ向かう途中、ちょっと様子のおかしいおばあさんと遭遇。
天気はいいけど冷えて寒い、にもかかわらず薄いカーディガン1枚。身なりは品よくフツーだけど、小さい靴をつっかけるように履いて、白髪はぼさぼさ、表情は少し不安げ。
一度はすれちがったのだけど、やっぱり気になって、自転車止めて振り返ってみる。そぞろな感じで、前へ前へ歩いて行く…。
う~ん、これは近所の方のただの朝の散歩なのか、にしては格好は寒そうだし、靴も合ってない。やっぱり、認知症の人で、家や施設から出て歩き、帰り道が分からなくなっているのではないだろうか?
遠目に見ていると、あ、おばあさん、急に立ち止まって、周りを見渡したと思うと、今度は向きを変えて戻り始めた。迷ってる!? だとしたら怪しい。
そこで、私も引き返して、思いきって声をかけてみる。いやでも、ほんとにただの朝の散歩だと申し訳ないので、さりげなく…
「いんや今日はいい天気ですね」
あ、おばあさん怪訝な顔で、こちらをみている。
いけない、これでは私の方がかえって怪しいおっさんになっている
見ず知らずの人にいきなり声をかけられたら、ちょっと驚くだろう。
いやでもそれは認知症状をもっていても変わらないし。
そこでさらにさりげなく、ナチュラルな笑顔を心がけながら…
「お寒くないですか?」
などと聞いてみる。
「ええ、寒くないですよ」
「いつも朝は散歩ですか、いいですね~ふふふ」
「いえ、朝は散歩しないですよ」
やっぱり怪しいか?
「ご近所なんですか」
「ええ、家はすぐそこなのよ」と、腕を上げてその辺をさししめす。
これも微妙だ。ほんとなのか? そう思い込んでいるのかも?
「いやお寒そうなので、だいじょぶかな~と思ってつい声をかけました。失礼しますた」
「いいのよ。声をかけてくれて。いつでも声をかけてちょうだい。いま散歩してたの」
うーん、よくわからない。
あと二言三言、おしゃべりして、何となくニコニコして別れる。
そのあと、ちょっと先の細い路地に入って行かれたから、ほんとに近所の方だったかもしれない。こっちの思い込みだったのかしら。
ま、でも、天気がいいわね、あら寒そうね、だいじょうぶ~?
と声かけ合っても別にわるくないし。
むしろ、それがもっとナチュラルにできるムードがあると、ほんとはけっこう安心かも。
朝は急いでるから、なかなか余裕ないし、私もそのあとぶっ飛ばす。
商店街に入ると、今度はあれ? 左前方にカバンを首にかけて、前につんのめりそうになりながら、歩いているおじいさんが! ごめん誰か声かけて~!