アタシの老後はフィリピンの少年に | グレースケアのとんち介護教室

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時代の先端にして崖っぷち、ケアのトレンドを脱力レビュー。

ジェフリーは15歳の男の子。

両親は早くに亡くなり、おばあちゃんに育てられた。夢は介護士になって、海外で働くこと。

小柄な身体に澄んだ瞳、深夜から朝まで漁の手伝いをして1日の稼ぎは約70円。それで病気の祖母の世話をしながら、介護士の学校に通う。とにかく、けなげだ。


2日のNHK・BSドキュメントは、『アジアに生きる子どもたち フィリピン~介護士をめざす少年』。


学校で、現地の日本人高齢者施設を見学。61棟ものコンドミニアム。すでにこんなのができ、移住している日本人がいることに驚く。マネジャーらしき日本人、「ここで働くこともできますか?」との教師の質問に「それは…いいですよ…」とぶっきらぼうな返事。子どもたちはそれでも目を輝かせて拍手する。

(フィリピン人が介護することをあまり知らしめたくないのだろうか?この態度)

施設での実習。

気難しく何をいっても不機嫌で気に入らないお年寄り。強迫神経症的に、掃除を繰り返しやらせる。

物盗られ妄想があり、つながらない電話で抗議するお年寄り。ダンスを軽やかに踊ったかと思うと、気分が悪いと倒れこむ。


う~ん、困った年寄りのタイプは万国共通だ。


対応も、とにかく相手の機嫌を推し量りながら、孫の写真を手にお喋り、外の散歩で気を紛らす、認知症には否定しないで話を合わせて付き合う…、と対応のノウハウは、日本のケアと変わらない。


ジェフリー君、はじめは叱られてばかりだったのに、童謡チューリップを披露したり、率直に意見をいえるまでに関係が深まる。お年寄りへ伝えたのは、

1.いつも笑顔で 2.たまには外へ 3.何でも自分でしようとしないで人に頼んで


まあ意見するのは関係がよっぽどできなければご法度だが、彼は自然に話しかけられる。ただ日本のトレンドと比べると、3だけはちょっと外れている。いまは介護予防に自立支援だから、「何でも自分でしようとして」だ)。

最後は涙の別れ。おばあさんも顔をシワクチャにしてラスト一言、「ちゃんと床掃除をしてって」。立派。

帰り際のジェフリー君、「すごい達成感です」と最高の笑顔…。


番組の末尾、「介護士でやっていく自信はありますか?」と聞かれて、答える。

「自信があるとかないとかではなく、絶対に介護士でやり遂げると心に誓っているのです


すばらしい!私が事業者だったらすぐに雇いたい。


できる介護職のタイプもまた、万国共通だと思う。

1.モチベーションが高い 2.お客様・利用者本位 3.仕事がきっちり丁寧 4.理念と倫理観がばっちり 5.他人とうまくやっていける…


外国人介護職の導入には、日本の労働市場がいっそう低コスト体質になると反対する向きもある。

確かに、1日分の給与が、フィリピンでは2ヶ月分以上の収入に相当する。

ジェフリー君の生活環境も、バラックにムシロ敷き、タッパーの残り物手づかみで食事、井戸水にタライで洗濯など、いまの日本の生活水準から比べると、ギャップが大きく、介護現場でも文化の違いにとどまらず、生活環境や衛生観念の差がにじみ出ることに拒否感をもつ人も少なくないと思う。

(あと20~30年くらいの間の日本の高齢者は、まだ貧しい時代を知っているので、かえって、通じるものはあるかもしれない)。


ただ、これ見ると日本人よりよっぽどモチベーションが高く、魅力的な介護士であることには違いない。

これはやっぱり少年だから、なのか??


そういえば、いちどホームにフィリピン出身の人が面接にきたことがあった。とってもチャーミングだったのだが…。


つづく。


NHKによる番組の紹介


BSドキュメンタリー
 「アジアに生きる子どもたち」
  - 僕とおばあちゃんのために~フィリピン・介護士を目指す子ども~ -
後9:10~10:00
 新たな経済発展の切り札として“介護立国”を目指すフィリピン。ラグナ州カランバ市役所では今年6月、10代の少年少女を対象とした「ケアギバー養成ジュニアコース」が開設された。小さな時から外国語や異なる宗教や生活習慣、徹底した介護スキルを身につけた介護士(ケアギバー)を養成することで、国際市場で有利な条件を獲得しようというのだ。
 コースの定員は20名、説明会のあと7月上旬には選抜試験が行われた。チャンスを勝ち取った子どもたちは最初の6か月間の授業料を免除され、さまざまな研修に取り組むことになる。
 フィリピンのアロヨ政権にとって介護労働力の海外輸出は経済発展の要だ。しかし、年間20万人と言われる労働力が海を渡り、家族の離散などの矛盾も出始めた。ジュニアコースをめざす子どもたちも、兄弟の多くがすでに海外で働いており、親の感情は複雑だ。9月から始まる実技研修では、子どもたち自身も外国人介護の難しさに直面していくことになる。
 番組では、国際的需要が高まる介護市場を前に、将来のチャンスを切り開こうとケアギバーを目指すフィリピンの子どもたちの姿を追う。