夜勤エクセサイズで乙女の夢は | グレースケアのとんち介護教室

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時代の先端にして崖っぷち、ケアのトレンドを脱力レビュー。

先月は7回、今月は4回の夜のおつとめ。


NPOで事業をはじめながら、グループホームでも非常勤ケアマネジャーで残っているから、つい人がいない、急に休んだなどの時など夜勤にもハイってしまう。


シフトの業務、まして人不足の職場だと、病気や事故、心身の不調や疲労、家庭の事情など、仕事に来れない事態が起きても、無理をしがちだったりする。特に責任感の強い人。リーダーや管理者。で、休めないことがまたストレスになって追い込まれたり。フォローにまわりすぎたり。


いざというときに代わりに入れる人を複数確保しておくことって大事。シフトの前後の調整や、他のフロアやユニットとの調整や、人を減らして手を抜ける業務の調整、などの手を尽くしつつ、ほかに緊急要員が確保できるとなお安心。

もっとも、いまはただでさえ人がいない。下手にゆとりがあると、あっ、そのスキにいい人が逃げ出そうとしている!!! その退職届待った! 私が先! ちがうでしょう…。 


私はシフトの埋め合わせでホーム運営と職員のセーフティネットになっていると自負しているが、NPOの仕事だけでは食えない私には、逆に助かるアルバイトになってたりする。あれ、これ実は私のセーフティネットってこと?


久しぶりに入ったユニットでは、以前は何とか夜間も歩行器で歩いていた上川さん(仮名)が、身体が前に丸まってしまい力が出ずに車イスで介助。で、夜中よくご家族の名前やスタッフを繰り返し呼ばれたものだが、その訴えにも力がない。行くと「まったく気がきかないねっ~」とかキツク言われず、「夜中によく起きれたね」と礼まで言われる始末。調子がちがう。


朝には気弱にも「私のお母さんはどこ?」。
「う~んどこでしょうね…」。
「ねぇ!本当のお母さんはどこ?」。複雑な家庭らしい。
ご自身も明治の生まれなので、お母様は恐らくもういない。
年齢的に一番近そうなのはエドナ・バーカーさん(世界最高齢115歳)だが、米国人なのでたぶん違うだろう。


私はうんうんと曖昧にうなずき返していたら(お約束の受容)、別のスタッフ「ここにはいないわよ!(この世には)」と言い切った上、いま上川さんいくつ? と聞きにくいことをズバリ聞く。


「じゅうなな」
ウラ若き乙女。目がかわいい。80歳以上もサバをよんでいるので、スタッフが残酷にも耳の遠い彼女に実年齢を耳元で伝えると、


「え~!!」と驚かれる。あ、伝わったのかなと思ったら
「さんじゅういち? もうそんな歳なの?」


まだだいぶ差がある。
なんだかんだ、数字を紙に書いたりしたら、急に思い出した様子。
「やだね~」と苦笑いの目はすっかりいつもの上川さんで、いい意味でバアさんなのだった。
で、気弱で不安な調子はぶっ飛び、安心してうつらうつら…。


認知症の方のケア、相手に寄り添ってその世界に入り込むのも一興だけど、逆にこっちの世界に引っ張っ

て戻すというのも一興。そのときどき、個々の関わり次第。


夢とうつつの間で日々暮らし、気づいたらあれ? 上川さん、エドナさん抜いてるよ! おめでとう!


そんなことよりお母さんに会いたいよ。…本当のお母さんに。