続・総務省が厚労省を叱ったワケ | グレースケアのとんち介護教室

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時代の先端にして崖っぷち、ケアのトレンドを脱力レビュー。

つづいて二つ目は、

介護予防サービス等の利用が低調だから、増やしなさいってコト。

http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/pdf/080905_1_dai3-2.pdf

もちろん、本人が閉じこもりなどで身体機能を低下させないよう、また、家族介護の負担を軽減するためにサービスの利用が促されるのは必要だけれども、逆に、もともと根強い「介護予防」の効果への疑問を封じて一昨年、
鳴り物入りで始めた以上、事業を進めること自体が目的化しているところはないだろうか?


具体的な提案のうち、介護予防プランの報酬が低すぎというのはその通りで、上げるのは当然としても

(要介護1・2は1万円、要介護3~5は1万3千円に対して、要支援1・2はわずか4千円。居宅のケアマネジャーは委託を引き受けない)、「介護予防の効果を広報して利用促進を図ること」というのは、ちょっと違和感がある。


どうして増えないか?


介護予防の利用が低調な理由として、正直に自治体(サンプル76市町村)が答えているのは、

1 本人がサービスを利用する必要性を感じていないため(28市町村)

2 本人又は家族に、予防給付の理解が十分ではないため(5市町村)

3 その他(家族が介護しているため、認定を受けたが体調が改善したため、入院、施設入所のため等)(21市町村)

要支援認定を受けても、実際にサービスを使うのは6割ほど。


本人や家族の生活に大きな支障が出ていては問題だし、掘り起こしも必要だが、利用率としては妥当ではないだろうか。そもそも、大多数の要支援者は、介護予防の効果を信じてサービスを使ってるわけではないはず。



導入前に、厚労省が行ったモデル事業の報告(介護予防市町村モデル事業 実施報告書)http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/topics/050727/index.html  によると、筋力アップなどに限れば、確かに効果はあるっていうデータがつくられているのだけど、

例えば「生活機能・QOLに関する項目」では、「老研式活動能力指標」(397人)で改善24.9%維持60.2%悪化14.9%とか、ホントに効果あるっていえるの?ってところ。

http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080905_1_3.html

効果が疑わしいことまで、逆に十分理解されているから、利用が低調ってことも。



ただし、「市町村からは、本事業の効果が不明との意見がある一方で、厚生労働省は、一定の効果ありとの中間分析結果を公表(平成20年5月)」



ちなみに、2年がかりで行っている厚労省の調査分析の予算が4億円。さらにこれだけお金をかけて、効果がなかったなんて言えないよね…。



実は総務省もウスウス疑ってもいるようで、「要支援者」についてはやれって言っているものの、それ以前の「特定高齢者」に対する介護予防については、事業の在り方を検討するようにと歯切れは悪い。参加率は3割とさらに低いのに。



「特定高齢者に対する介護予防事業の利用効果の分析」によると、

事業を導入した結果、
1000名のうち、
改善・維持 951名、悪化 49名。


おー、やっぱり効果あるじゃないですか~! と思ったら、



事業を導入する前の結果、

1000名のうち、改善・維持 944名、悪化 56名。



はっ? 始める前と後とで、ほとんど結果変わらない…。



改善・維持をいっしょにしている数字も怪しい。内訳をみたら、実はやらない方が改善者が多かったりして。

厚労省も「統計学的に有意な効果は認められなかったとの中間分析結果を公表(平成20年5月)」。

そもそも特定高齢者の介護予防、自治体によっては相当無理して、参加者をかき集めていたがやっぱりここで介護予防の効果をアピールするには、無理がある。

特定高齢者の介護予防は、検診とかスクリーニングでお金流れるから医師会がこだわっている、とか、かつての保健事業の置き換えで保健センターの仕事づくり、とか、こっそり教えてくれる役所の人もいるが、ホントのところはわからない。

また、今のメニューでは、転倒予防とか誤嚥防止にはなっても結局「要介護」になるのを少しばかり先のばしするだけで、要介護や認知症になったあともさらに長生きできる筋力体力をつけることになったりもする。

とまれ、フツーに畑仕事やら家事やら寄り合いだとかコミュニティセンターだとか、ご近所のなかで動いている人を、わざわざ行政の仕組みのなかに取り込まなくてもいいのではないだろうか?

どうしても何か「介護予防」で押しつけがましいことをしないといけないのならば、70代80代90代の元気なお年寄りには、ぜひフツーの暮らしのなかで、介護現場に短時間お手伝いに来て、いっしょに体操やらレクやらをしてもらうように仕向ける。それで身体は維持できるし、閉じこもりも防いで張りにはなるし、現場の人手不足は多少? フォローされるし、一石三鳥だ。

さらに、同世代ながら身近な要介護のセンパイに触れると、たぶん、それで、あ~こうならないように元気を保たなくちゃって自ら家でバーベル上げるようになるか、

あるいは、な~んだ、自然な老いは別に怖くないんだ十人十色あんな風にボケて関わり合いで暮らせれば安心って、不自然な先のばしのジタバタをやめるか、

どっちにしても、動員じゃなくて、もう少し、自ら、自分らしく老いていくきっかけにはなるんじゃないかしら。

まだつづくわよ。

総務省さま、ネタをありがとう!!